「……ハァ……」

 帰宅したあと、さすがにそろそろ寝ようということになり、仮眠したら初日の出を見に行こうだの、いや起きれないだろだのと騒ぎつつも全員が紳一の部屋に入ったのを見届けてから、は一人で湯船に浸かっていた。
 すっかり身体が冷えていたため、心底ホッとする。
 と、同時に――いまこの同じ家の屋根の下に仙道がいると思うと、どこか緊張するようなくすぐったいような、不思議な心境が沸き起こってきた。
 付き合っているとはいっても、仙道の部屋に泊まったことはもちろんないし、こうして夜に一緒にいられるのは初めてのことだ。
 連れてきてくれた諸星に感謝しないと、と思いつつ手でお湯をすくって、ふふ、と一人笑った。

 その頃――、仙道は自分の状況に「いや、これはねーだろ」と自分自身で突っ込んでいた。
 なぜ、彼女の家にいて、男3人で仲良く寝るなどという事態を甘んじて受け入れねばならないのか。
 紳一はベッドに横たわり、諸星と自分には簡易マットレスでベッド風に布団を敷いてくれており、むろん環境が悪いということではないのだが。
 チラリと暗闇にすっかり慣れた目でベッドを見やる。紳一は既に寝付いている。さらに諸星の布団を見やると、こちらも問題なく寝付いているようだ。
 仙道は寝間着に使っていた予備のジャージのポケットに手を突っ込んで、あらかじめ用意していた個装の小さな袋を5個ほどを握りしめた。
 さすがに一晩で全て消費しようなどと思っていたわけではないが――、このままこの部屋で夜明かしは、できればご免被りたい。
 の部屋は、確か廊下を挟んで斜め前だったはず。
 確認するように浮かべると、仙道は極限まで音を殺して起きあがって布団から抜け、そっと紳一の部屋を後にした。

 一方、は自身の長い髪を丁寧に乾かして、パジャマのうえからカーディガンを羽織って寒い廊下で肩を震わせていた。
 部屋には既に暖房を仕込んできている。階段さえ抜ければ暖かい空間だ、と逸るように音に気を付けながらも駆け上がると、突き当たりでヌッと黒い影が視界を塞いで「ひっ」と思わず声をあげそうになった。

「しーっ、オレだって」

 寸でのところで唇を大きな手に押さえられたかと思うと、眼前に仙道の顔が映って、予想外のことにの瞳が少し見開かれる。

「せ、仙道くん……」
「急に階段の電気が付いたからオレも驚いたんだけど……、下にいたのか、ちゃん」
「うん。お風呂に入ってたの。仙道くんこそ……、どうしたの? もう寝たかと思ってたのに」

 が疑問を寄せるように仙道を見上げてきて、う、と仙道はおののいた。
 風呂上がりとは、計算外だ。例に漏れず、まだ蒸気を纏っているかのような頬が色っぽい。
 さすがに拒否されれば大人しく紳一の部屋に戻ろうと思っていたというのに。まいった、と心の中で呟く。既に自信がない。
「あー……いや、ちゃんの部屋、行こうと思ってたんだけど」
「え……!? な、なんで」
「さすがに、男3人はねーだろ……、牧さんの部屋で」
 そんな風に訴えてみると、はキョトンとしたのちに「あ、そっか」と得心がいったように頷いた。
「3人とも大きいし……、ちょっと狭いよね」
 言って、は先を歩き出し、の部屋とおぼしきドアの前に立ってからこちらを見た。
「あ、私の部屋、ここなの」
 さすがに仙道は首を捻った。
 分かっているのだろうか? いくらなんでも、こうもあっさり受け入れられると身構えてしまう。
 ドアを開いた彼女は、どうぞ、と促して部屋の、おそらく豆電球であろう、を付けた。
 薄ぼんやりとした空間に、紳一の部屋とは違う心地良い香りがフワッと広がっている。ごくっ、と仙道は喉を鳴らした。やっぱり、女の子、だよな、と今さらなことを思う。
ちゃん……」
「私のベッド、マットレスよりは寝心地いいと思うから、良かったら使って」
 抱きしめようと手を伸ばしたところで、笑顔でそんなことを言われて「は?」と仙道は固まった。
「え……、使って、って」
「私は叔母さん達の部屋で寝るから、気にしないで」
 やはりそう言うオチか。と仙道は思わず舌打ちしそうな自分に何とか耐えた。そして「おやすみなさい」と出ていこうとするをどうにか制して音を立てないようにドアを閉める。
 すると、は虚を突かれたようにキョトンと目を瞬かせた。
「な、なに……?」
「なにも別々の部屋で寝るこたねーだろ」
「え……!?」
「オレ達、付き合ってるんじゃなかったっけ?」
「え……、そう、だけど」
 キョトンとしながらも、そこまで言えばさすがに理解したのか、ハッとしたようにが口を開いて何かを言う気配を見せた。
 その前に仙道はの膝裏に手を入れて抱きかかえ、があっけに取られているうちにベッドへと運んでそっとベッドの上へ身体をおろして座らせ、自分ものベッドへとあがる。
「え……ちょっと、待って……」
「なんで?」
「だ、だって……、お兄ちゃんと大ちゃんが……」
「寝てるだろ。それに、割と牧さんの部屋とこの部屋は距離もあるしな」
「で、でも……」
「ま、念のために声は抑えた方がいいかもしんねえけど」
「ちょッ……んッ」
 ぐだぐだと反論が続きそうだったため、が口を開く前に仙道は自分の唇でそれを塞いだ。
 そのまま深く口付けながらゆっくりベッドに押し倒すと、肩のあたりを掴まれて抗われ、仕方なく唇を解放して顔をあげる。
「ん、いや……?」
「い、いやとかそういうことじゃない! だいたい、元旦からこんなことしなくても……」
「そこ、拘るところか?」
「い、一緒に寝るのは構わないから……、それだけじゃダメ?」
「さすがにそりゃ……無理かな」
 思わず仙道の口からは苦笑いが漏れてしまった。その手の耐久レースに興じる趣味は残念ながらない。それに――思った以上に、彼女のベッド、という状況がやべーな、と思いのほか煽られている自分を仙道はなるべく出さないように努めた。既にじんじんと自分の中心が痛いほどだ。
 の耳元に顔を埋めると、洗い立ての髪の匂いが刺激になってゾクゾクと身体中をかけていく。
「……ッ……ん……」
 そのまま首筋に舌を這わせれば、が息を詰めたのが伝った。構わずに続けてふと目線をあげると、は自身の唇を噛んでいた。やはり、声が漏れるのが気になるのだろう。
 けど、そういうのもけっこうソソるな、と、口に出せない感想を浮かべてパジャマの上からまさぐっていた手を中へと滑り込ませる。すると、止めるようにしての手が仙道の手に重ねられた。
「や……やっぱり……やめよ……?」
 仙道としては、やはり嫌がられてまでも無理強いしたいものでもなく、いったん手を止めざるを得ない。
「そんなにいやか?」
「だ、だから……いやとかじゃなくて……。元旦だし……」
「一日早えけど姫はじめなら立派な行事だろ」
「そ……! そ、それに、初日の出、見に行こうって言ってたのに……、起きれなくなるし」
「大丈夫。牧さんたちもぜってー起きねえって。それに……」
 言いながら、仙道は片方の手での着ていたパジャマのボタンに触れた。
「オレは彼女の部屋で寝てたってだけで、別に後ろ暗いこたねーし」
 ――まあ、牧さんに殺される可能性は否定できないけどな。という思いは飲み込んで言い下すと、少しだけの身体が撓ったのが仙道の身体に伝った。
 そうして仙道は長い指を器用に使って下のボタンから順に外し、前をはだけさせ脱がせながらの肌に吸い付いて柔らかい感触を楽しむように唇を滑らせる。
「……ッ……ッ!!」
 の息があがってくるのが伝わる。抵抗してくる気配もないし、どうやらこちらの要求は呑んでくれたらしい。そう解釈して仙道は口元を緩めた。


「……っ、ん……ぁ、ん、ん……ッ」

 仙道が泊まりにくる。――といっても、こういうコトはまさか想定していなかったのに。
 仙道の言い分も、理解できる、けど。ベッドに沈められてどれくらい経ったのだろう?
 結局、いつも通り仙道の思うつぼだ――。
 重なりあってゆるゆると身体を揺らす仙道の逞しい肩から腕に定まらないままに手を這わせて、は懸命に荒い息を声として漏らすまいと耐えていた。
 いつもそうだ。散々煽られて巧みに高ぶらされて、こうして繋がる頃には既に思考回路なんてまともに働いてない。
「ッ……ちゃん……」
 呼びかけられて反射的に目を開けると、チュ、と仙道の唇が自身の唇に音を立てて触れ、そのまま当たり前のように何度も重ね合って舌を絡ませあった。
「ん……、ッ、ん」
 こういう感情を、どう表現していいか分からない。けれども、少なくともこうして彼と肌を合わせているのはとても心地が良くて、優しく何度もキスしてくれるのが嬉しくて。浮かされながらいま感じられる唯一のことは、仙道を好きだという気持ちだけだ。
「せんど……くん……ッ」
 仙道の右手が胸元を好き勝手に這って、首筋を喰らうようにして舐めあげられ、絶えず下からも突き上げられては圧迫感に抗うように仙道の後頭部を抱いた。指が、腕が意識せずとももどかしげに彼の髪を撫で、線を辿るように頭から首筋、肩を何度も行き来してしまう。
 仙道の乱れた息がダイレクトに耳にかかって、時おり熱く漏れてくる掠れたような低い声が仙道も高ぶっているのだと言外に告げ、自分でも分からないほどにゾクゾクと煽られてしまう。
「……ッ……っ」
 は痛いほどに唇を噛んでギュッと瞳を瞑った。肌が粟立つ感覚が断片的に襲って、目尻に勝手に涙が滲んでくる。逃げたくとも逃れられない。渦巻くような波の予兆だ。
 すると察したのか仙道が耳元に唇を寄せてきた。
「イキそ?」
 揺さぶられながら低く囁かれ、は仙道の肩に添えていた手にギュッと力を込めてから小さく頷いた。とたん、打ち付ける音が響くほどに仙道の与えてくる動きが激しさを増す。同時に唇が鎖骨あたりに移動してきて、はいやいやするようにしてかぶりを振った。

「――ッ、ゃ……、ぁ……っ!」

 せっぱ詰まった熱を解放させたいだろうに、耐えるようにきつく眉を寄せるの額に汗で髪が張り付いてひどくなまめかしい。
 下手すると、自分がもってかれそうだ。と、仙道はその顔をちらりと見てから再び首筋に顔を埋め、絶えず何度も自身をぶつけた。
 求めるように自分の背中を辿るの手が心地良い。いつもと違うベッド、いつもと違う空間。ここは確かにの部屋で、が毎日過ごしている場所で。いま自分たちが絡み合っているのはそんな場所だと意識すればするほど自分の方が先に終わりを迎えそうになり、やべ、と首を振るう。
 そして奥を擦るようにして強く何度か突き上げると、限界が近かっただろうの身体はうねるようにして波打った。
「ッ――!!……ぁ……っ、ぁぅ……ん……ぅ」
 頬を紅潮させたは口元に手をあてて無意識なのか腰を震わせ、荒く息を漏らして目尻に涙を溜めている。
 そのが自分に与える内外問わずの物理的、視覚的刺激に陶酔しかけて呻くもなんとか耐え、仙道は打ち付ける速度を緩めての手をとった。そして口元からのけさせると、労うようにして頭を撫でてやりながら唇を重ねる。
「んー……んっ……」
 一番、身体がの意志で動かない時だ。けれども無意識に官能を求めるのか、甘い口づけを返してくれる――仙道にとっては好きな瞬間の一つでもあり、ふ、と口付けながら他意なく口の端をあげた。
 少しの呼吸が整うのを待って、体勢を変えるべく仙道はの左足の膝裏に触れた。するとそこはじっとりと汗ばんでいて、彼女の身体がついいま限界に達したことを克明に告げており、否応なしに満足感を覚えながらから一度自分を離してうつぶせにする。
 そしてすぐにまた繋がろうとするも、は身体に力が入らないのか自身を支えきれず崩れ落ちる。しかも、これから受けるだろう刺激に抗えるか自身の声を案じたのだろう。枕を抱きかかえるようにして唇を押しあててしまった。
 確かに。さっきの今だと、これまでの経験上、もはや唇を噛む程度で声を殺すのは厳しいだろうが。と思いつつも自分にもあまり余裕がないこともあり、仙道はの腰を掴むと再び身体を繋げて自身の腰を押し出すようにして強く打ち付け始めた。
 ギュッとは枕を掴み、痛々しいほど眉を寄せている横顔が見下ろす仙道の視界に映る。
 辛い、わけではないと思うが、いささか不安だ。そもそも、こうやっているとどうも無理やりしているような気がして気が引ける。自分にはその手の欲求はあまりない。
 それよりも、もっと顔が見たいし、キスしてえ。と、欲求のままに脇の下から手を入れて抱き上げ、さらに深く密着して後ろからあごを捉えて奪うように唇を重ねた。
「ん……んっ……」
 もはやどこから水音が響いてきているのかさえよく分からない。
「せん、どう……くん」
 キスの合間に熱い息ととも名を囁かれた。うっすら開いたの瞳は危うく揺れ、濡れて熱を帯びている。
、ちゃん……ッ」
 仙道も煽られるようにしてもっと深く舌を絡ませ、抱いていた腰を強く掴んで叩き付けるように自身の高ぶりを伝えた。
 そして再びを仰向けにさせると、シーツに手をついて激しい抜き挿しを開始する。先ほどと違い、こちらにも余裕がない。
 揺さぶられて眼下で跳ねるは、必死に指を噛んだり手のひらを押さえつけて漏れる声を殺そうと努めている。そんな姿も扇情的ではあるが、彼女は完全に耐えきるのは無理だろう。仮に気づかれて、この時間を誰かに邪魔されるのはたまらない。
「ぁ、……っ、ぅ……んっ、ん……っ」
 息の合間に漏れるの甘い声を聞きながら、ちょっと惜しいけど、と考えると同時に仙道はに詫びた。
 ワリぃ、と心内で呟きながら、自身の大きな手での唇を覆う。
「ん――ッ!?」
 すると驚いたようにが目を見開いたが、同時に奥まで突き上げたせいか直ぐに余裕のない表情に変わった。
「ん……ッ! ん――ッ、……ん!」
 こんな、無理やりするようなことは趣味ではないのだが。仕方ねえよな、と自身に言い聞かせつつ自分の熱を解放させるべくの内部を抉るようにして擦りあげる。
 口の自由を奪われたはギュッと閉じた目尻に涙を浮かべて強く首を振るい――仙道も限界を感じて深く自身を埋め、快楽のままに顔を歪めて低い呻きをこぼした。そして欲の示す通りに何度かに腰を打ち付けたあと――ぐったりと彼女の身体に体重を預けた。


 そして――、自分はそのあとの時間もまったり楽しみたいのだが。
「やれやれ……」
 自身の腕の中で小さな寝息を立てるの髪を撫でながら、仙道はうすく苦笑いを漏らした。
 一種のクセなのかもしれないが、行為が終わるとは極端に眠気が襲うタイプらしく――たいていは抗えずにすぐに落ちてしまう。
 ここだけは彼女の望むように男並だな、と思うも、自分はもう少し話したり触れ合ったりしたいというのに、上手くいかない。
 とはいえ、眠気が襲うのは自分との行為に満足してくれたということだろうから、良い方に考えとくか、と思いつつも口をへの字に曲げる。
「足りねえんだけどな……オレ」
 少しでも意識を戻してくれれば、もう一度誘うことも可能だが、さすがに今日は無理だろうか。
「……ん……」
 空いていた手で毛布をかけ直して自分も寝ようとしていると、身を捩ったがさらに自分の胸元の方へ身体を寄せてきて、仙道は少しだけ目を見張るも笑みをこぼした。
 するりと長い髪に指を通してから頭を撫で、ふ、と口の端をあげる。ずっとずっと欲しかった子が自分の腕の中にいるのだ。これ以上に満たされた気持ちもないだろう。
 あとは――、もうちょい胸のボリュームがありゃ文句ナシなんだがな、とちらりと胸元に視線を落として、本人に聞かれたら即刻別れ話に発展しかねないことを浮かべた。
 いや、これに関しては成長期まっただ中なのだから、今後に期待しとくか。と、なお薄く笑う。
 実際、二年ほどまえの出会ったばかりのころのを思い浮かべると、今のはややふっくらと女性的になっていると思う。彼女にしてみたら、その成長はいやなものであったのかもしれないが。やっぱり、が女の子で良かった。と、自分とは質の違う柔らかな身体を抱き直しつつ仙道もゆっくりと瞳を閉じた。

 そして3時間ほど経った頃だろうか――。
 カーテンの隙間から眩しい日差しが差し込んで、「ん……」とはその光に反応してうっすら瞳を開いた。
「……あれ……」
 なんだかいつもの目覚めと違っていて違和感を覚えていると、眼前に仙道の寝顔が飛び込んできては目を見開いた。
「ッ――!?」
 しかも、しっかり力強い腕に抱きしめられていて身動きもとれない。そうしながら、は瞬間的につい数時間前の出来事を思い出して少しだけ息を詰めた。
 まったく、もう。と思うも、こうして仙道と共に朝を迎えるのは初めての経験だ。
 睫毛長いなぁ、なんて仙道の寝顔を覗き込みながら笑みをこぼしてしまう。体温が心地いい。やっぱり、こうしてすぐそばにいてくれて嬉しい。
「……ん……」
 そうしてくすぐったい気持ちのまま仙道の腕の中で笑みを浮かべていると、ぴく、と仙道の頬が動いた。次いで、垂れ気味の瞳がゆっくりと開かれる。
「……ちゃん……?」
「おはよう、仙道くん」
 言ってみると、ふ、と仙道の瞳が細められた。そして優しく額の髪をはらって撫でてくれたかと思うと、ギシッ、とベッドを軋ませながら少し身を起こしてに覆い被さり、チュ、と音を立てて軽くキスをしてきた。
「おはよ」
 は一瞬、目を見開いたものの、すぐに柔らかく笑った。
 そのまま仙道はコツンと額を合わせてきて、二人して瞳を見つめ合ったまま微笑み合う。しかし。が穏やかさと幸福を感じたのはそこまでだった。
 ふと、自身の下半身に不自然な感触を覚えて首を捻る。が……なんだろう、となお考えていると、目の前の仙道は自分が何かを探っているのを察したのか、どこかバツの悪そうな表情を浮かべていた。
「仙道くん……?」
「ははは、生理現象ってヤツかな……」
 言われて、自分が感じている「違和感」の正体を悟ったは反射的に頬を引きつらせた。
 生理現象を否定するつもりは全くないが、この状況は不味いのでは――。と、考えているうちに仙道はさらにこちらに体重をかけてくる。
「ちょッ、と……」
「ワリぃ、ちゃん。ちょっと付き合って」
 そして反論する間さえ与えてもらえず――、さすがには少しだけ眼前の男を恨めしく思った。



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