+ トッキュー!!感想 +
第二十巻 |
□二十巻。
不思議の海のナディア、というアニメがあります。たぶん有名だと思います。 そこにフェイトさんというキャラがいました。名前の通り、悪い運命を辿るために出てきたような人です。 機関士で、彼の乗っているノーチラス号という艦に有毒ガスが発生した際に機関室と外に通じる隔壁を閉鎖して、一人ガスの充満する機関室で死んでいった人です。 彼は死の少し前までは死を受け入れていたかに見えました。隔壁の外にいるヒーローのジャンに「船長の判断は正しいよ」なんて語って聞かせたりして、カッコ良く死んでいくかと思ったフェイトさんですが……突然、やはり死ぬ直前になって「俺は死にたくない! まだやりたいことがあるんだ!」と絶叫し……やがて彼のいた機関室からは物音一つしなくなりました。 そんなフェイトさんの死に様はそばで感じていたジャンにも、視聴者にも深いトラウマを残し、アニメ屈指のトラウマシーンとしてよく取り上げられているのを見ます。 正直ナディアというアニメ自体は私は微妙な出来だと思うんですが、このフェイトさんのシーンだけはよく覚えています。トラウマとまではいきませんけど。 なぜそんな話をしたかと言うと、兵悟は今まさにジャンやトラウマ視聴者と同じような心境になっているという説明のためです。 まさにフェイトさんのように「俺が死ぬのは仕方ない」と死を受け入れてカッコよく死のうとしていたダムの所長が死の間際になって「俺は死にたくない!」って自身にしがみついてきて……兵悟はリアルに「死の恐怖」を所長さんから感じ取ってしまったんですね。 こうやって他の作品を例に出していかにトラウマかを説明しなきゃならない時点で、漫画としては演出的に失敗しているというか……私にはいまいちこの漫画からは伝わってきませんでしたが、兵悟はとにかくフェイトさん症候群にかかっちゃって、今までの無茶ぶりを恐怖するようになったみたいです。 「今のままだといつか死にます。それも他人を巻き添えにして」 高嶺さんはそんな言葉を残し、メグルに副隊長の座を明け渡してベレー帽を脱いでしまいました。 一方の兵悟はフェイトさん症候群になっていることをひた隠しつつ空元気。 そんな兵悟のおかしな様子を感じつつ、ユリちゃんは友人の結婚式に出席するために単身佐世保へ帰郷することになりました。 色々と兵悟にお土産を頼まれてましたけど……何をおいてもまず醤油だと思います。東京の醤油まずかー! 泥水んごた! って絶対一度メグルは言ってると思うんだ……、黒いし辛いし刺身醤油はないし……ほんと、醤油だけは未だに美味しいと思えない。これは永遠のイタチごっこなので、東の人は西の甘い醤油は駄目だと思いますけども。 ユリちゃんが佐世保に戻ると、いつもは停泊していた「しらは」の姿はなく新しい巡視船に変わっていました。 ちょうど海保のイベントをやっていて、仕事してた坂崎さんに会ったユリちゃん。坂崎さんから「陸にあがった」と坂崎さんが潜水士を辞めてしまったことを聞きます。 坂崎さんはたぶん真田のちょい上くらいだし、オッシーがまだまだ現役でやってることを思えばもう少し潜水士続けられたんでしょうけど、腰を痛めているので大事をとってのことらしいです。 なんだか寂しいなぁと思いつつ、ユリちゃんは学生時代の友人とかつてアルバイトをしていた居酒屋で呑みつつ全く進展のない兵悟のことについてお喋りをしていました。 すると、不意にテレビ画面には兵悟の姿が……。 それはイノマリちゃんが撮ったダムでの水難の映像でした。テレビ局でイノマリちゃんも「何も聞いてないのに」と勝手に使われてしまったことを驚いています。 放映を見て周りは兵悟の勇士を讃えていますが、ユリちゃんは兵悟の無茶ぶりを見せつけられて心底恐怖してます。 それは兵悟の家族も同様で、父親の死を未だに受け入れていない兵悟はいつか父親の所へ行ってしまうんじゃないか、とたまらない模様です。 どうでもいいですけど、ユリちゃんの回想に「潜水士やめさせたほうがこいつのためと違います?」という嶋さんがいたのがビックリでした。あ、ちゃんと覚えてたんだ……みたいな(笑) まあ、嶋さんが初っぱなから危惧していたこと、高嶺さんが言ったことをユリちゃんも感じて、このままだと兵悟はいつか死んでしまう……と、うっすらトッキューをそしてレスキューを辞めるよう思っているみたいです。 そんな気持ちのまま佐世保に帰ると、マンションから叫び声が聞こえてきて慌てて部屋に入ると暗がりの中で泣いている兵悟がいました。 「助けて……父ちゃんが呼ぶんだ……」と。自分が泳げたら助けられたのに。だから無意識にいつものレスキューに父親の姿を重ねてしまって、どんな無茶な場所へでも飛び込んで行ってしまうんだ、と。 けれどもフェイトさん症候群にかかった兵悟は、「助からないイメージ」が頭から離れなくて、もう次は帰って来られないかもしれない、とユリちゃんに訴えました。 だから、トッキュー辞める、と。 「父ちゃん……怒るかな……?」という兵悟を抱きしめて、兵悟くんは十分助けたからもういいんだよ、とユリちゃんは慰めました。兵悟が死んだらイヤだ、と。 でもそんなとき、無情にも兵悟の携帯が鳴り――羽田から呼び出しです。ここでユリちゃんを抱いてれば立ち直ったかもしれないのに、少年誌という媒体な以上そうは問屋が卸しません。呼び出された以上は行かないわけにはいかないので、ユリちゃんに「心配しないで待ってて」と言い残して兵悟は羽田に向かいました。 フェイトさん症候群の兵悟も大変ですが、世間はもっと大変なことになっていました。 インドネシアはスマトラ沖の大地震でコッキンタイの召集がかかり、24時間以内に羽田から現地へと飛ぶことが早々に決まったんですね。 俗に言うスマトラ沖地震ですが、現実世界の時期とは大分外れてるので(トッキュー時間では今は秋っぽい)、何の関係もないんだと思います。 基地長からメンバーが発表されました。 「真田、嶋本、トッキューを辞めてはいるが今回は特別に救命士として高嶺、そして……神林。以上だ」 高嶺さんは沖縄に発つ直前だったらしく、慌ただしく基地にやってきました。 嶋さんは任命されてマジで緊張してものっそ汗かいてます。いいなぁ嶋さんの緊張感。この表情めちゃくちゃ好き。 兵悟のことは真田が推薦したらしいです。なんでもハイパーの檜垣さんから「以前一緒に訓練した経験のあるもの」という打診があったらしく、兵悟を推したのだそう。 ……真田、お前さ……この前の高嶺さんの忠告何も聞いてねーじゃねーか。なんで兵悟なんだよ、アンドリューでいいじゃん。意味わからんわ。 と真田を責めたくなりますが、これは主人公特権なので、さすがに真田のせいにするのは可哀想かな。これがリアルだったら間違いなくアンドリューが選ばれてる場面ですね。 まあ、当然、真田が兵悟を選んだことでメグルはお怒りです。なんで副隊長のオイより兵悟君、とね。 こいつアホちゃうか……と思ってたら、珍しく真田が至極まっとうな諭し方をしました。 「お前が副隊長だからだ。俺のかわりに六隊を頼む」 うむ、当然だな。つーか何のための副隊長だよ……隊長が行くなら当然副隊長は留守番だろ。なんでこんなことも分かんないんだろう。アホすぎて六隊の将来といか、六隊が救助に行った先の現場が可哀想になる次第です。 ていうか「死体は物」と言い切るメグルには日の丸背負って海外でレスキューとかして欲しくないですね。死体にも敬意を払う、という日本のすばらしいレスキュー魂はそれこそ世界から一目置かれ、やはり日本人の精神は素晴らしいと誇らしく思っているのに……メグルなんか行っちゃったら日本の恥です。遺体に敬礼してるレスキューマンの姿とか、メグルの目にはどう映るんだろうなぁ。そう思うと、私だったらあえてメグルをコッキンタイとして行かせて檜垣さんの元で現地の凄惨さを目の当たりにして精神的に成長していく、って話を描くかもな、と思ったり。 アンドリューはコッキンタイには一度行ったことがあるらしく、もう行きたくない、みたいなことを言ってましたが。トッキュー三年目にしてコッキンタイ経験済ということは、漫画始まって今までコッキンタイ派遣場面はなかったので、アンドリューが国の代表として行ったのはまさに新人のころだったんだなと思うと地味に凄い人だと思います。ぶっちゃけ大口より凄いんじゃね? やっぱ真田がドラフトで採っただけはあるんだと思います。 当の兵悟は指名されたからには断れず、辞表を握りしめて「ユリちゃんごめん」と心でユリちゃんに語りかけつつそのまま日本を発つことになりました。 えー、せっかくのコッキンタイ召集なのに、まあ自衛隊が無視されるのはいつものこととして、せっかく警視庁の機動救助隊とか来てるのに、来てるだけでまるで存在感がない感じなのがちょっと残念ですね。 最終回へむけていっちょ大きな舞台用意してみっか! 的なノリで描いたようにしか思えない感じなのでその辺は深く突っ込まない方がいいのかもしれません。ジャカルタである意味もあんまり感じられなかったし。救命士として来たはずの高嶺さんなんてモブ扱いでいるのかいないのか分からなかったですし。ていうか高嶺さんが救命士としてもっとも輝いていたのって皮肉なことにゴッ輝とのコラボ漫画でですよね……本編とは全く関係のない。 当のジャカルタはやっぱり凄惨な雰囲気になってます。 嶋さんとそっくりな女性、ミムラさんもやってきて嶋さんと感動の初対面。とかもあったりしますが正直どうでもいいネタでした。 さて、現地では南部隊長が汗だくで頑張っております。 ここは大羽をコッキンタイ派遣して、南部隊長と感動の対面を果たすべきなんちゃうの? なんて思ったりもしましたが主人公どころか同期で一番陰が薄い大羽にそんな出番を求めるのは無理ですよね。分かってます。まあ、南部・嶋本と揃っちゃったら「ワ、ワシはどっちの命令をきけばいいんじゃ!?」って大羽が混乱しちゃうから仕方ないよネ☆ 真田はいざ兵悟を連れてはきたものの、やっぱりフェイトさん症候群にかかってる兵悟じゃ不安だということで前線には出さず、資機材の管理のみを任せます。 それが新人の仕事や、俺も最初はそうやった! なんてもっともらしい理由を付けて兵悟を納得させた嶋さんは流石だと思いました。ちゅーか真田は相変わらず言葉が足りねぇ! せめて兵悟のこと大事に思ってるなら嶋さんくらいの思いやりを態度で示してやって……!(笑) すぐそばで数え切れないほどの数の人が死んでいって、色んな国に人間がレスキューしていて。どんな人でもどんな時でも助けてやれ、という父親から教わったシーマンシップとフェイトさん症候群の間で揺れる兵悟です。 白昼夢まで見る始末で危うく余震で崩壊したビルの瓦礫の下敷きになりそうな所を真田にレスキューされたりする事態にまでなってます。 「自分の命は自分で守れってあれほど教えたやろアホンダラッ!」 嶋本隊長も兵悟がそばにいると気が気じゃないでしょうね。やはり大羽みたいな優等生じゃないと(笑) えー、そんな折り、空の女神こと恵子ちゃんがピューマと共にやってきました。 いや、保安庁のピューマとかいらんやん。消防のピューマ連れてこいよ、ギリシャ船海難のときは消防ピューマ出たのに今回はドーファンのみとかねーわ。つか全部消防でいいよヘリは……なんて思ったりもしたけど、最終回へ向けて恵子ちゃんが必要だから仕方ないですね。 えー、第二陣としてヘリ部隊も到着したようですが……なんか輸送機がすごい未確認飛行物体なんだけど、これ何ですかね? アントノフのルスランか? いや、見知ったルスランとはなんかマーキングが違う……えーなんだろ。トッキューオリジナルの輸送機? まあいいや。 ドーファン好きなので、ドーファンが画面に映ったのがちょっと嬉しかったです。ドーファンは可愛い。ピューマより断然可愛いと思う。ただ、赤塗装はいただけない……! 海保もドーファン買っちゃえば良いのに。一番私好みの塗装になりそうなのに……! しかし、自衛隊部隊も来てるだろうから絶対私の愛するC-130輸送機ちゃんもこの辺飛んでるはずなんだよなー、画面に映ってないだけで! 颯爽と瓦礫の上を旋回するC-130輸送機ちゃんとか一瞬でも描かれれば私のテンションだだ上がりだったのになー……。 なんて駆け足のように過ぎていく中で、やっぱり兵悟は揺れてます。 真田に近づきたくて、追いかけて、今はジャカルタの空の下にいる。ずいぶん遠くへ来たんだな……なんて思いつつ兵悟は真田に日本に帰国したらトッキューを辞めようと思っていることを伝えました。 いつか誰かを巻き込んで死ぬ前に辞める、と。 すると真田はこんなことを言いました。 「俺は、人を殺したことがある。――伊藤有、俺の最初のバディ、そして五十嵐恵子の婚約者だ」 真田ストーカーとの誉れ高い恵子ちゃんがコーヒー持って来ようとしてた所での出来事だったので、こっそり恵子ちゃんも死角で聞きつつ、真田の回想に入ります。 伊藤有。どうでもいいですけど、こんなに重要なキャラなのにレスキュー隊の手ぬぐい王子と同じ名前(字まで同じ)なのはいかがなものかと思います。 えー、そんな伊藤君ですが、保大卒業を間近に控えたある日、恵子ちゃんと共に真田にこう告げました。 「甚、俺たち、結婚決めたんだ」 さすがの真田もビックリです。恵子ちゃんは大慌て。 「あの、すぐ結婚するってわけじゃなくてね、卒業したらどーせ別々の勤務地になるんだし……私はまだ早いって判断したんだけど」 「俺は出会って一週間でもう結婚申し込んでたけどな。イガさんなかなかOKしてくんなくてさ」 「本気にするワケないでしょ!? そんな入学してすぐなんて……」 「三年以上かけてやっと婚約までこれてさ……本当大変だったよ」 黄昏時にこんな会話を交わす三人を、ものっそ遠くの木の陰で涙を流して見守るヤン嶋が笑い……じゃないや涙を誘います。お前……恵子ちゃんへの恋心は消えたもんだとばかり思ってたけど、それはそれで残ってたんだな!(笑) まあ保大時代の恵子ちゃん可愛いもんな! でも伊藤君くらいしつこくアタックしないと恵子ちゃんは落とせないのだよ……! ていうかお前ぶっちゃけ相手にされてな(略) まあ、ちょっとだけヤン嶋に同情しつつ、もしかして真田も恵子ちゃん好きだったのかも……と思っているので真田にもちょっと同情。 真田にとって伊藤は一番の親友であり、一番負けたくない相手。真田はあの通りの天然だし、主席入学だったりして近寄りがたくて、そんな真田に物怖じせずに明るい性格で付きまとってきたのが伊藤君だったのでした。 まあ、「好きな女が甚に似てる」って言ってたので伊藤君は単にこの手のタイプが好みだったんでしょう。女である恵子ちゃんは恋人に、男である真田は親友に、ってところでしょうか。 伊藤君は入学時からトッキューを目指しており、当時特修科に来ていた黒岩さんに泳ぎを見てもらったりして「甚、ぜったい一緒にトッキューに行こうな!」なんて言っていたのでした。 真田はというと、特にレスキューを志していたわけでもなく、保安官として絶対にやりたい仕事があったわけでもなく、ただ伊藤君に先に行かれたくないという思いのみで潜水士になったようです。 そのまま卒業して、二人して潜水課程へ。ここで生え際の無事な若かりし頃の坂崎さんがいるのが面白いです。一瞬あまりに髪ファッサーで坂崎さんって気づきませんでした。きっと伊藤・坂崎・真田で仲が良かったんでしょうね。伊藤は終盤のキャラだからともかく、坂崎さんと真田のコンビだけは唯一真田を好きと思える場面だったりします。坂崎さんといる時の真田はすごく自然体というか、坂崎さんはたぶん真田より年上で内面も練れてて真田との距離を置きつつ彼を理解してるから良いんだろうな、と思います。 潜水士になったあとは二人して横浜の巡視船・おず所属になったそうです。 これは正直……、一回の潜水課程で潜水士なんて数人しか排出しないのにこんな上手く同じ船配属ってないだろと思うんですが。ま、まあ、たまたまおずの潜水士が数人いっぺんに引退したんだろうな、ということにしておこう。 そんな感じで真田と伊藤は潜水士として、恵子ちゃんはヘリパイになるために航空課程をお勉強の日々です。この頃の海保はヘリパイも海自に委託なので、恵子ちゃんは海自に出向してお勉強ですね。こんな感じで航空部隊は特に「海自には俺の師匠がいる!!」って人多いですよね。現場出てからもしょっちゅう海自に研修行ってるし。まあ、本物の階級世界のなかで研修を受けたにしては……恵子ちゃんは、ちょっと残念なことになってますけども。 そんなこんなで、真田も恵子ちゃんも明るい伊藤に励まされつつ日々を過ごしていましたが、ある日、悲劇は起きました。 伊豆沖を航行していた漁船にタンカーが衝突。現場に向かった真田と伊藤がタンカーを調査していると、ガス検知機が反応しました。すぐにマスクをしつつガス元を探していると船底に人影を発見し、呼びかけるも反応はなし。 ガス濃度は上昇を続け、あと八分で爆発下限界に達するという計算で……船底の人影を助けに行くか否か。伊藤は「行こう、甚」と言いました。真田も、俺と有ならやれる、と船底を目指します。 でも――その判断は間違っていました。 今のトッキューの隊長である真田なら、絶対にやれる事でした。でもまだ未熟だったあのころは……スキルも経験も何もかもが足りなかったのです。 結局船底の人影は見間違いで、もと来た道を戻ろうとするも焦りから道を間違えて五分以内に戻れるという計算が大幅にズレてしまい――最後の扉に手をかけた瞬間が運命の分かれ目になってしまいました。 爆発した船内から生きて救出されたのは真田だけ。意識を取り戻した真田が見たのは、変わり果てた親友の姿でした。 彼の死を見て、自分たちが既にデッドラインを越えていたのだ……と号泣する真田。 「この状況で、お前は星野とバディを組めるか?」 いつか、星野君が除隊した時に抗議にきた兵悟達に言い放った真田の言葉は……まさに自分が経験したことだったのだと真田の話を聞いて悟った兵悟です。 星野君を信じて一緒に行く、と言った兵悟に真田は何を思ったんでしょうね。少なくとも、兵悟は伊藤に似ている部分が多いにあるので、やっぱり真田にとっては放ってはおけない存在だったと思います。 「真田さんはレスキュー辞めようとは思わなかったんですか?」 兵悟の真田への問いを聞いて、出歯亀していた恵子ちゃんは伊藤の葬式でのことを思い出すのでした。 レスキューを続けたい、と真田に言われたこと。そうすることでしか生きていく意味を見つけられない、と言った真田の顔は……爆発で受けた怪我の影響で片目だけが本来の一重から伊藤と同じ二重になっていて、恵子ちゃんは言葉を失いました。あなたの中に有がいる、と。 恵子ちゃんが未だに真田ストーカーしてるのは、真田の中に伊藤が生きてると思ってるからなんだなぁ……と思うと、けっこうロマンチストな恵子ちゃんなのでした。 でも「人を殺したことがある」という真田の言葉は、自責の念で言ってるんでしょうけど違いますよね。船底に行こうって言い出したのは伊藤の方だし、止めなかった真田も連帯責任ってのは分かるけど。それ以上にどんな理由があったとしても親友が亡くなったという事実を前に自責の念を感じるなというほうが無理ですけど。 一方、兵悟の問いかけへの真田の答えはこうでした。 レスキューの壁を越えていく、と。 そうして席を立った真田の話を……こちらもまた事情を知る嶋さんがバスの中で聞いていて、複雑そうな表情を浮かべるのでした。 完璧なる部外者だけども、事情を知ってしまっているというもどかしい立ち位置の彼は何を思うのでしょうか。どちらにせよ嶋さんにはどうしようもできない事なので、これからも割り切れない彼はもどかしい思いを抱き続けるのでしょう。ほんま難儀な人やな……! 兵悟は真田の話を聞いて、やっぱり真田のそばでレスキューしたいとトッキューを辞めたくないと思います。けれども、フェイトさん症候群はそう簡単には収まらなくて……いつかデッドラインを越えてしまいそうな自分に恐怖する気持ちもまだ残ってます。 そんな時、ジャカルタの兵悟のそっくりさんが行方不明だという話が飛び込んできました。 立て続けに余震が起きて、海のそばだったものだから津波が発生して瓦礫の街をすごい勢いで飲み込んでいきます。 兵悟がさっき会った兵悟のそっくりさんの子供も津波の襲ってくる先にいて……兵悟を父親と勘違いした子供は「パパ……!」と兵悟に助けを求めて、兵悟は一瞬だけ迷って、津波の方にかけだして行ってしまいました。 真田は、止めませんでした。それが兵悟の出した答えなら、と。ここが嶋さんとの違い、と言ってもまあ真田なので仕方ありません。 ダムの時とは違い、兵悟の脳裏にはユリちゃんの綺麗な笑顔が浮かぶのみでした。ごめんね、ユリちゃん。とそんなことを思っていたのかもしれません。 子供を助け上げて、子供の笑顔を残して……二人は津波に飲み込まれていってしまいました。 一方、日本の病院で研修中のユリちゃんは患者さんの持っていたテレビのニュースを目にして固まりました。 神林兵悟隊員、行方不明。そんなニュースです。 外務省もパニック、当然海保もパニックで霞ヶ関にはマスコミが押し掛けて凄いことになってます。 ニュースを伝えるイノマリちゃんも、兵悟のことを知っているだけに心配でしょう。 そのニュースが流れるトッキュー基地では、海難通報が鳴り響いて当直の六隊が出動することになりました。 いつも以上に冷静に振る舞うメグルですが、兵悟大好きツンデレ王なので……一人兵悟のヘルメットを床に投げつけて耐えきれずに号泣です。物に八つ当たりするところがいかにもメグルですね。 物音にビックリしてメグルの様子を見に行ったアンドリューも貰い泣き。神林、わかってんのか? どれだけ俺たちがジャカルタに飛んで行きたいか……と思いつつ「向こうで六隊が頑張ってんだ! こっちも負けずにレスキューすっぞ」と気丈に振る舞うアンドリューを見て……やはり、副隊長はアンドリューがなるべきだった、と再確認しました。つか、実質こうやってアンドリューが副隊長的なことやってんだろうなーと思いました。 そしてピューマで飛び立った六隊を見て「あれ、ピューマ二機ともジャカルタ来てたはずじゃ?」と大いに疑問。恵子ちゃんの乗るピューマの他に例の未確認飛行物体に確かにピューマがいたし。 まあ、以前話した通りしきしまのピューマがしょっちゅう羽田に来てるので、きっと今回もトッキュー世界のしきしま級ピューマが羽田に来ていて、それに乗って出動したんだと思います。そういうことにしときましょう。 そしてその頃……成田空港にはユリちゃんの姿がありました。 兵悟行方不明のニュースを聞いて、飛行機に飛び乗ったみたいです。 これは……いくらなんでも、渡航許可降りないだろうと思うんですが。降りたにしてもこんな速攻でビザとか取れないよ。まして家族でも何でもないんだし絶対無理。それに研修中の身で仕事ほっぽり出して海外へ飛ぶなんて最悪だよ。って突っ込みは野暮ですかね。最終回へ向けて何でもありですもんね。 現地へ飛んだユリちゃん、絶対に見つけてやるんだから、と単身兵悟を探します。 真田も兵悟が生きていると信じ、嶋さんや檜垣さんと共に捜索を続けてます。 兵悟の生存を、日本でも色んな人々が祈っています。 かつて兵悟と一緒に漂流した絵里子ちゃん。ずいぶんと大きくなったんだなーと成長した姿に感動です。 湯の湖で嶋本三隊に多大なるご迷惑をかけた例の奥日光のプルシェンコこと川畑君たちも兵悟を心配しているみたいです。川畑くんは順調にダイエット頑張っている様子が伺えました。 ギリシャ船海難で兵悟のことを「おじちゃん」などと言っていた少年も認識を改めたのか「あのときのおにーちゃん」とお兄ちゃんに格上げして兵悟を心配しています。 これは……なんていうか、クライマックスで「みんなオラに力わけてくれー!」という悟空の声に反応して懐かしキャラが顔を出す場面に似た嬉しさがありますよね。 みんなが兵悟の無事を祈り、探しているころ……兵悟はとある浜辺で倒れていました。 ユリちゃんがその兵悟の姿を発見し、ボロボロの兵悟の顔をのぞき込むと「なんでユリちゃんここにいるの?」と反応がありました。 泣いてユリちゃんは兵悟を抱きしめ、真田も兵悟の姿を発見して瞳に涙を浮かべ、嶋さんは気が抜けたのか土に膝を付けて……そしてやっぱり彼も瞳に涙を浮かべて兵悟に敬礼です。 兵悟もみんなに敬礼を返し、必ず生きて帰るというレスキューマンとしての答えを改めて出したのでした。 さてさて、無事に帰国して大団円です。 教会の鐘が鳴り響き、結婚式をあげる兵悟とユリちゃん。――の、夢!(笑) 結婚が夢オチとはさすがです、ユリちゃん。 ユリちゃんのこの夢、地味に面白いです。 「女の子の幸せはやっぱり結婚! そして出産よね〜〜〜」なんて言いつつメグルと結婚して子供まで作ってるすみれちゃんがいて、ああユリちゃんの中ですみれちゃんって男勝りに見えつつ「女の子の幸せは(略)」なんて言っちゃうキャラに見えてたんだな……つか本性見抜いてたんだな、と思うとその洞察力に感服するしかありません。 兵悟の同期としては正式に挨拶してもらった大羽やタカミツをまるっと無視して、式に出席しているのが星野君だけというのもまた笑えます。星野君の印象がユリちゃんの中で良かったのだろうか……(笑) 「日本の未来のためにもたくさん生んでくれ」なんて言っている真田はまあ当然として、「親子二代でトッキューもええなー!」とオッシーの魂を引き継いだ苺帽子とおそらく赤フン姿の嶋さんは……ユリちゃんの中で嶋さんのイメージって可哀想なことになってるなーと涙なしには語れないのでした(笑) まあ、そんな愉快な夢を見たユリちゃんですが、今は看護師の資格を取って医療福祉センターで新人として忙しい日々を送っています。 あのジャカルタの事件から三年――、兵悟が横浜を離れて離ればなれになってから三年が経とうとしていまいした。 当の兵悟はというと、トッキューを辞めて広島は呉の海上保安大学校で潜水教官をしていました。 奇跡の生還を果たした人、ということでそれなりに有名らしいです。余談ですが、帰国した直後感極まって「一生彼女を大事にします!」と助けに来てくれたユリちゃんにメディアの前でプロポーズしたみたいですが、どうやら断られたらしいです(笑) 保大のお祭りで潜水士について説明する兵悟の頭上を、一機のヘリコプターが通り過ぎていました。 そのヘリは展示訓練の予定を切り上げて、急な海中転落者の捜索をしに出たトッキューの第四隊が乗っていました。 現トッキュー第四隊、隊長は大口誠治郎。副隊長は大羽廣隆。そして潜水担当、武山直美です。 その大口隊の乗るヘリはベル212。最終回に、いつものピューマではなく大好きなベル212が登場したことに喜びを隠せなかったのは私です(笑) あー、もうじき退役しちゃうけど、212は永遠なのだよ……! あの大口が隊長ですよ、隊長。なんか落ち着いた隊長ぶりですよ、あの大口が! そして大羽副隊長……! うわー、指揮官の証である二本線のヘルメットが眩しい! いやー、大羽ってば保校出っぽいのに副隊長だよ、凄いよね……! 別に保校出という確定情報はないんですが、私はそうだと思ってます。保大出だったら既に隊長だろうし、何より初期の座学のできなさっぷりと、星野君と初対面っぽい感じで保大出ではないと思いますから。保大出だったら星野君とは学生時代から顔見知りじゃないとおかしいし、先輩なので、とてもあんな風に親友なんてなれないだろうしね。 なので、この空白の三年間で特修科に行ってみんなより一足先に幹部になっちゃったんでしょうね。いやあ、同期の中で一番劣っていた大羽が一番の出世株ってのが感慨深いですね。嶋本隊長、先見の明ありすぎだろう(笑) そんな大羽の乗るベル212を見送る兵悟に誰かが声をかけてきました。 「トッキューば離れて三年、仲間に先に行かれる気持ちはどがんね?」 「メグル君……。特修科の学生は警備中じゃなかったっけ?」 「トイレ休憩ばい!!」 そう、メグルは大羽に一歩遅れをとりつつ今現在特修科に通っているのでした。やはり副隊長は臨時措置で速攻降格になったんですね。当然です。世の中そんな都合のいい話ばかりではありません。 まあ、無事に来春特修科を卒業できたとしてどれほど早くても次に副隊長に就任するのはその年の暮れ。順当に隊長になれたとしてもそれが叶うのは五年以上先なので、やはり大羽に大分水をあけられてますね。 まあメグルは嫌味を言いに来たわけではなく、大口隊が捜索に出た海中転落者が無事に見つかったことを兵悟に伝えに来たのでした。相変わらずのTUNDEREです。 兵悟は自分が今、潜水教官やってることを不思議に思うのでした。かつてこの保大のプールで泳げなかった自分が人に教えているなんて、と。 でもなかなか教官ぶりが様になってます。笑顔で厳しいこと言っちゃったりして、なんか人に指導してる兵悟見てると成長したなーって思います。しかしながらこんな若い教官ってどうなんだろう。下手すると潜水士の卵たちより若いですよ。保大卒のエリート潜水士候補よりは確実に若いだろうし、階級も兵悟は下だし、ナメられそうというかお互いやりにくそうというか。 でも、兵悟は着実にいい男になりつつあります。それに対してメグルさんは二十代も後半だろうに、まだメッシュとか……そろそろドン引きなんですけど、髪型変える気ないのかな……。いい男っぷりでも大分大羽に水をあけられてますよメグルさん……それどころか兵悟にも抜かれてますよ……。 さて兵悟は今夜の飲み会の幹事も務めており、そこには懐かしい顔がたくさん集いました。 「よう!! 神林! 関空からわざわざ来てやったで!!」 真っ先に乗り込んできたのは、関空の機動救難班――キッキューの班長になっていた嶋さんでした。相変わらず態度デカいっす。ていうか、あなた……いい年してアロハシャツですか? やっべ、こいつまだ独身だよ、さっさと結婚して落ち着けよ、と心底思った場面でもありました。 「久しぶり、兵悟。元気してた?」 ついで嶋さんと一緒に現れたのは星野君。彼もまた関空の嶋さんのもとでキッキューとして働いているようです。ていうか星野君……あんなにオシャレさんだったのにファッションセンス鈍ってないか!? 横浜離れるとこうなっちゃうのか? 大阪に染まりすぎちゃったのかー!?(偏見) なんか元々ヤバそうだった生え際もさらにやばいし、心配だよ……。大羽はヤバそうでいて生え際大丈夫っぽいのに……、やっぱり兵悟の同期一の優良物件は大羽だな、うん(どういう基準だ) そして急な出動から戻ってきた大口の四隊もやってきました。 「間に合うてよかった」 「腹、減ったぁ〜」 相変わらずの大羽と相変わらずお気楽そうな大口です。武山は久々に兵悟に会えてめっちゃ嬉しそうです。まだ兵悟に憧れてるのかな(笑) そして今度はしらはの櫻井さんが来ました。今は福岡航空基地のキッキューにいるみたいです。トッキューに行くことは叶わなかったけどキッキューにいるんですね櫻井さん。なにげに福岡のキッキューは出動回数の多い部隊なので、やりがいのある職場だと思います。 ついで塾長です。塾長も今はトッキューを離れ、美保航空基地のキッキューにいるそうです。最終回でも変わらず、私の中で「トッキューナンバー1」の座には凛然と塾長が座っておいでです。塾長はトッキューとしてもキャラとしても素晴らしいお人でした。 そしてオッシー。オッシーは呉の巡視船に乗って潜水班長として現役バリバリみたいです。さすがオッシーですね(笑) 最後に現れたのは特修科の三馬鹿ことメグルとタカミツとアンドリュー。 おお、アンドリューもようやく隊長になる決意をしたか……! とりあえず近い将来「大羽が隊長に昇格しちゃったしー、だったら俺の副隊長ってお前しかいないよね!」と大口に副隊長に指名されるという可哀想なことにならないよう祈るばかりです(笑) 嶋さんは三馬鹿のことを「このアホ3人組が将来のトッキュー隊長か……」と不安げでしたが、アンドリューは良い隊長になれそうだし、タカミツも黒岩さんみたいな隊長になれそうだし、まあ心配なのはメグルやね。鳴り物入りのルーキーだったのに、今やアホ呼ばわりとは、地味にメグルは転落人生いってますね。はい上がって良い隊長になってもらいたいです。 星野君は、無事に救命士の資格を取って、嶋さんに呼ばれて関空のキッキューになったみたいです。 これは本当に感動しました。自ら引導を渡したことを嶋さんはずっと気にかけてて、どうにかして星野君にオレンジ着させてやりたいってずっと思ってたんだろうなぁ……と嶋さんの教え子愛には本当に脱帽ですよ。以前に話した通り、キッキューはトッキューと違ってコンバットレスキューの側面を持ち、救命士というのは極めて重要なポジションになります。救難士の絶対数も少ないので、出動の際には救命士をメインに据えて作戦を立てる事も多く……なにげに星野君の役割は重要です。これから嶋本班長のもとでめいっぱい頑張って欲しいですね。 そして当の嶋さんは……嶋本組で固まって呑んでました。 「つげ、大羽! 気ぃきかんなぁ」 「はいっ!」 「そんなんで隊長になれると思うとんのか!」 「思うとんのか〜」 相変わらず嶋本軍曹にタジタジの大羽と、そんな大羽と軍曹を見て面白がっている大口です。嶋本組仲良すぎだろこれ……! 相変わらず嶋さんは腕が男っぽくてカッコイイ! さて、飲み会に来ていないメンツはというと、小鉄もやはり既にトッキューを退いて今は地元函館でキッキューとして頑張っているらしいです。高嶺さんも沖縄でキッキュー班長としてバリバリやってるらしい。 「黒岩さんは今、三管の救難課で出動のたびに直接電話かかってくるよ」 もー、と愚痴る大口です。 黒岩さんは出世なさって今はスーツ着てるみたいです。ていうか筋肉自慢てだいたい救難課に行く運命ですよね。トッキューあがりといったらあそこ、みたいな。 すみれちゃんは秘書課にいるとのこと。兵悟がマンション出たあと、あのマンションには武山兄妹で住んでいる模様です。親御さんもこれなら安心でしょう。さすがにユリちゃんはマンション出たと思いたい(笑) まあ、そんなこんなでみんなと楽しく話す兵悟の様子が気に入らないメグルがいました。 「なんばヘラヘラ笑うとるとや、内心悔しかならそう言えばよかろーもん。いちいちガマンしとる自分に酔っとるみたいで気持ち悪か。コッキンタイのあと上の判断でトッキュー辞めさせられて三年も現場から離れさせやがってふざくんなって言えばよかやろ!!」 さっそく喧嘩おっぱじめる二人です。 「メグル君、俺の考えてることわかってんならいちいちそんなこと言わないでよ!!」 「わからん、兵悟くんのことなんかいっちょんわからん!!」 私、今思ったんですけど……自分が福岡出身なのでメグルの方言にはなんの疑問も持たず普通に意味が分かるんですが、果たしてそれ以外の人は「いっちょん」とか言われて分かるのだろうか……と疑問です。関西弁はあまりに有名で説明されずとも分かると思うんですけど、「いっちょん」とか「せからしか」とか「しとらすよ」とか……分かるの、かな……と。 ちなみに「いっちょん」は「少しも」という意味です。そしてまたこの言葉のニュアンスが微妙で、否定語なんですが否定しつつ好きみたいなツンデレな意味合いを持っているので本来の正しい意味で「わ、私、兵悟君のことなんか少しも分からないんだからね! 勘違いしないでよね!」という言い換えができるまさにメグルらしいツンデレな言葉なわけですね。 そんなわけで喧嘩していると、二人の前に今まで話題にのぼらなかったあの人が現れました。 海外派遣中・真田甚。 さ、真田……左遷っすか……。かなり出世コースから外れてるようですが……。 なんでもパプアニューギニアから数日限りの帰国らしく、ちょっと顔出しに来たらしいです。 兵悟に話があったらしく、真田は兵悟にこう言いました。 「トッキューに戻ってみないか」 真田……! お前、やっぱり兵悟のことだけは気にかけてたんだな……! と感動しかけたんです、が。 「今、トッキューで欠員が出ている。お前がよければこの潜水研修が終わってすぐにでも来て欲しいそうだ。今年度から本庁にいる奥村元基地長が働きかけてくれてるらしい」 ってお前の推薦じゃないのかよ!!!!!!! いやー、最終回でも真田はやっぱり真田でしたわ……マジぱねぇっすよ。兵悟をトッキューに呼び戻すべく働きかけてくれたの真田じゃなくて、小樽という左遷の地から本庁に舞い戻った基地長かよ……。嶋さんと星野君みたいな感動秘話は真田と兵悟にはないのかよ……。 私はかなりズルッとずっこけた感じだったんですが、心の奥底でトッキューをあきらめられなかった兵悟は感無量ですよね。 真田の話を聞いて涙ぐむ兵悟の元へ集う同期たちがまた涙を誘います。 メグルが兵悟の肩を掴み、タカミツも星野君も涙ぐんで駆け寄って……。 って大羽どこーーー!!?? こ、これは酷い……大羽だけスルーなんて……。いくら影が薄いからってあんまりだよ……。 ま、まあ大羽には……大口と嶋さんがいるから……い、いいんだ……。 かくして兵悟のトッキュー復活で盛り上がる居酒屋の外では、またまたストーカー根性発揮してこっそりやってきたユリちゃんの姿がありました。 「これでユリちゃんとまた一緒に暮らせるな! もう一回プロポーズだ!」 なんて声が窓から聞こえてきたもんだから、顔を出しにくくなったユリちゃんです(笑) そんなユリちゃんに「顔出しにいかないの?」と声をかけてきた女性はこれまた立派な真田(の中の伊藤)ストーカーの恵子ちゃん。なんでも保大で研修があるらしい。なんの研修だろう……同じ呉でも海自の呉で研修って言われればまだ分かるんですが。 あーでも保大出パイロットって、防衛大出パイロットと同じで、そう長くはパイロットやれないからなー。近いうちに恵子ちゃんも本来の幹部の道を行くのでしょう。 ユリちゃんは兵悟がトッキューに戻ることに肯定的です。どこまでも追いかけていく、とユリちゃんらしい笑顔でした。 そして兵悟はトッキューに戻り……再びオレンジを着て、「どこへでもどんな時でも人を助けに行きたい」と駆け回る日々――、というところでエンドマークです。 色々ありましたけど、全二十巻。 読んで良かったなーと思える漫画でした。 漫画としては巻数が若い初期の方が完成度高くて面白かったですけども、後半のもどかしさもったいなさもこれはこれでご愛敬です。 でも、物語を作るにあたって取材したことや自分の知識としてあることを100%出そうとするのは愚行であり……特に後半「もったいないので取材したこと全部詰め込んで描きました!」感じになってて構成がグダグダだったのは本当に惜しいなぁと思いました。 せっかく海保漫画なのに、海保のごくごく一部の仕事であるレスキューがまるで海保の全てのように感じられたのは……惜しい以前に誤解を与えるんじゃないか、と危惧もしましたけど。もうちょっと一般保安官の奮闘も見たかったですね。 これは個人的趣味なんですが、オレンジより紺の作業着のほうが好きなので、トッキュー以前の兵悟の方がカッコ良く思えたりもしました(笑) 最後、総括して私的ベスト3台詞を発表したいと思います。 第一位。 「俺たちは今、羽田にいる」 100キロ行軍を終えた兵悟の夢の中でのモノローグです。これは本当にジーンと来ました。漫画ならではの演出というか、文字で訴えて想像させるという意味ではこの余韻は映像では出せない……という意味でもナンバー1にチョイスです。 羽田にいる、という言葉に込められた気持ちというか、そこに辿り着くために仲間たちとしてきた苦労とか色々ギュッと凝縮されていて凄く印象に残ってます。 第二位。 「空から、救助に来ます!」 トッキューに転属になった兵悟が「次にしらはにもどってくるときはどっちか分かってるな?」って坂崎さんに言われて、大空を指さしながら笑顔で言った場面です。 これは、本当なら第一位にしたいくらい好きなシーンなんですが……残念なことにこの漫画ならではの伏線クラッシャーというか、次に繋がる台詞にならなかったので第二位にしました。 ベタでも、しらはに兵悟のいる隊が駆けつけて降下する……というエピソードは見たかったですね。 第三位。 「ただいまより救助指揮をお預かりいたします」 嶋本隊長、初出動でおずに降り立ちおずの船長に向かって敬礼した場面です。これぞトッキュー、これぞ隊長、これぞ指揮官。という模範的な言動を初出動でやってのけた嶋本隊長のすばらしさがギュッと凝縮された場面ですね。 おまけで次点。 「我々は、出動しない」 西海橋での海難で、真田を見捨てる発言をした嶋本副隊長のお言葉。 シビアでリアリストな嶋さんらしい冷静な判断だったと思います。教え子の事になると冷静さを欠くこともあるけど、彼の良さはこういったリアリストな部分だと思いますね。 時に指揮官というのはこういう辛い決断をしなくてはならない。とても立派で、やはりこれぞ指揮官、という所を見せてくれたのでこの場面をチョイス。 他にも色々と良い台詞、良い場面ありましたが書いているとキリがないので以上で締めたいと思います。 このWJ一色のサイトで少しでもトッキューを広めたい、という思いからレビューをやり始め、なんとか最後まで書ききることができました。 簡易レビューとか言いつつ、これだけの文字量を二十巻分書くというのはなかなか、いやかなり大変でしたが……いかがだったでしょうか? 感想、労い(笑)等々ありましたら下記から是非お願いします。 |