6月は第4金曜日。 仙台はまだまだ湿気が多く、梅雨真っ盛りである。 この時期、及川のクセ毛はいつも以上に跳ねまくって一事が万事で大騒ぎしては岩泉の神経を逆撫で、ですら髪の毛の事となると「ストレートが羨ましい」と零していたりする。 が、剛毛を誇る岩泉にはまったく無関係であり、そもそも髪の毛一つで大騒ぎする軟弱な神経は持ち合わせていない。 ――と、部活を終えて帰宅した岩泉は制服をハンガーに掛けて、ふぅ、とため息を吐いた。 青葉城西の制服も部活ジャージも自分にケンカを売っているとしか思えない配色で未だに慣れない。北一の学ランと青ジャージは我ながらなかなかに似合っていたと自負していたのだが。それをうっかり零してみたら「大丈夫だって、ちゃんと似合ってるよ! 俺ほどじゃないけどネ!」と微塵も似合っていると思ってなさそうなふざけた顔と声で及川に返された事をうっかり思い出してコメカミに青筋が立った。 部活は良くも悪くもまだまだ3年生が中心であるが、多少は北川第一の元レギュラーということで優遇されており、顔見知りの先輩もいて居心地は悪くない。 取りあえず3年が引退したあとのベンチ入りが目下の目標か。とカレンダーを見やって岩泉は頬を引きつらせた。近々、今学期最大の難関となるだろう期末試験がやってくる。中間試験において9教科中3教科で赤点を叩きだした結果、期末で一つでも赤点を取ればベンチ入りどころか一気に部活停止処分に処されることが確定している。おまけに期末は教科数がさらに増えるのだから、考えただけでうんざりである。 だが、一応は対策は万全だ。既に数週間前にオフの日に勉強を見てくれるように頼んでおり早め早めの復習を行っている。最低でも赤点は免れるだろう。でなければ困る。この土日も、空き時間は試験勉強にアテる予定だ。 ――と、テスト前の部活停止期間目前となった次の月曜日。 と居残って勉強を続けてしばらく、2人きりになった教室に「やっほー!」と苛つく声が割って入ったものだから、チッ、と岩泉は思わず舌打ちをした。確認せずとも声の主は知れている。 「なんでおめーが来るんだよ、及川」 「だってちゃんに誘われたんだもーん」 「その口調とトーン本気で引くわ」 「辛辣!!」 一気に勉強モードであった空気が乱され、なんだってはコイツを誘ったのか。と岩泉はちらりとを見やったものの、彼女は及川の様子を慣れたように見やって少し肩を竦めつつ笑っていた。これが及川のことをいつも笑顔で紳士的な美少年だと勘違いした女子だったらドン引きしている場面だろうが、さすがに慣れているのだろうと岩泉はため息を吐いた。及川の成績も手放しに良いとは言えないレベルなのは知っているし、赤点回避に越したことはないか。と気を取り直して黙らせるためにもノートを広げさせた。 「ゲッ……、数学じゃん。俺キライなんだけど」 「おめーの好き嫌いは聞いてねえ。邪魔すんなら帰れ」 ぶすっと頬を膨らませる及川に再度突っ込みを入れて、取りあえずは3人での勉強を再開した。 基本的にやっていることは少しでも躓けばに訊いて解説してもらうというスタンスで、岩泉は中学で強制的にと補習を受けさせられて以来、いっその分かりやすい説明に感心していた。 それでも及川が合流してさらに一時間が過ぎた頃にはずしっと頭の重みを感じて、うっかり「頭いてぇ」と呟いてしまった。 及川も一度伸びをして、ため息を吐いている。 「ちゃんさー……、理数系の成績、異様にいいよね」 「英語もな。特進じゃないのを不思議がられてるし、ちょくちょく転科勧められてるよな」 「ゲッ、そーなの? なんで? 勉強もできるとかずるくない?」 神様ってほんと不公平! だの愚痴り始めた及川には頬を引きつらせて苦笑いを漏らし、彼女はパラパラとノートを捲りながらこう言った。 「私のお父さんね、学者なの。専門がバイオニクスで……えっと、端的に理系で、私も小さい頃から物理とか好きだったし、いまだってしょっちゅう教わってるから」 「あー……」 「それに、お父さん長いことイギリスで勉強してて、とにかく語学だけはけっこう厳しく仕込まれたから……中学から始めた他の子より、やっぱり有利かな」 「なるほど、そーいう……」 理由を聞いてしまえば至ってシンプルで。単なる幼少からの積み重ねの差か、と岩泉は納得した。 だけど、とはシャープペンをノートに向けた。 「空間認識能力って、画家には必須だから意識して鍛えてるの。及川くんもそうだよね?」 「へ……?」 「セッターって空間認識能力必須でしょ?」 「は……!? なんで……!?」 ガタッ、と椅子を慣らした及川に、はそのままシャープペンを走らせて、何やらバレーボールネットとセッターらしき人物とボールの軌道を描き始めた。 「だって、ほら、セッターがこの位置にいて、ボールの落下地点をココだって予測して回り込んで、さらにこの位置に上げたい、って思ったら空間的にはこうなってるんだから、ここの値を求めるにはこうなって……」 そうしてターゲットポイントらしきところに星マークを描き、そこの値を求める式をつらつら書いて「できた」と言って彼女は及川を見やった。 「こういうこと、考えながらやってるんだよね?」 「やってないよ!?」 「え……そうなの? そっか……でも、じゃあ無意識にやってるんだね」 「だからやってないからね?」 「じゃあ意識した方がいいんじゃないかな……」 「あー、理系屋っぽい理屈だね。あー……でも、うん。そっか。空間認識能力、ね」 「バレーの練習になると思ったら、数学も物理も楽しくなる?」 「うまく乗せたね」 岩泉は少しだけ目を見開いてそのやりとりを見つめた。やや反発しかけた及川を、は及川が言うとおり「上手く乗せ」た。けれどもにそんな意図があったとは思えない。いつも通りは柔らかく笑っており、及川もしてやられたような表情を浮かべて笑っている。 なんなんだコイツ。とゴクッ、と喉を鳴らした岩泉はそのままガタッと席を立った。 「限界だ。ちょっと購買行って食いモン買ってくるわ」 「あ、俺、牛乳パン!」 「自分で買え!!」 言いながら教室を出て廊下を購買に向かって歩いていく。 ――”天才”は上へ上へと突き進む。さも当然のように。少しだけ不穏なものが岩泉の胸中に沸き上がった。 なぜ不穏に感じたのか、いまは分からない。分からない。が、いまはこのままでいて欲しい。いままで通り、及川と同じチームで、及川が自分にトスをあげて、そうして自分が打つ。 もう記憶も定かでないほど昔から続けてきた関係を、いまはまだ。と、ふっと岩泉の脳裏に大昔の記憶が過ぎって、振り切るように舌打ちをした岩泉は全力で廊下を駆けた。 期末試験が終われば、あっと言う間に夏休みである。 バレー部は当然のようにほぼ毎日部活漬けで、日々を部活に励む及川は自身でトスをあげながら内心苛ついていた。 ――飛雄のヤツは、おバカなくせにちゃんの言うところの空間認識能力とやら「も」秀でているということなのだろう。 と、脳内で描いた理想のトスと自身の手から放たれるトスとの差異を感じ取って内心舌を打つ。 思えば彼の目には、狙った場所の空間がスコープで見えているかのように正確に把握できていた。ような気がする。 だとしたら結局、影山はセッターに必要な頭脳と、目と、そしてイメージを実現できる手という全てを持って生まれたということになる。 「次、Dクイック!」 「及川、もうちょい高く頼む!」 影山のように。脳裏に描いたイメージとピタリと合わさった場所にピンポイントでトスを上げられたら、どんなにか気持ちがいいのだろうか。などと考えたところで苛立ちが増大するだけで無意味だ。 影山が1の労力で10を得ることができるのなら、自分は10の労力で10を得るしかない。例え半歩でも追いつかれなければこちらの勝ち。今ごろ彼がどれほど上達しているのかは知らないが、まだまだ負けているつもりはない。 それに自分にはサーブだってある。セッターとしてではなくサーバーとして名が知られるようなセッターは疑問が残る。などと揶揄されることもあるが、サーブは自分の最大の武器だ。ブロックだって得意だし、今すぐウィングスパイカーにコンバートしてもエースを張れる自信がある程度にはスパイク力にも自信を持っている。 影山ほど精密なトスは上げられずとも、総合力ではぜったいに負けない。――と思う心とは裏腹に、やはり苛立ちが残るのは他でもない、自分自身がセッターだからだろう。 ――いけない。セッターはアタッカーの打ちやすいトスをあげてこそ。チームメイトが打ちやすいボールを上げられれば、それが一番いいのだ。 と、注文が来るたびに修正を繰り返して繰り返して、コーチから休憩を宣言されて及川はコートから出るとドリンクを手に取った。 「マッキー、さっきのトスいまみたいな感じでいい?」 「あ? まあいいんじゃね?」 そうして同じくドリンクを手に取った、ウィングスパイカーの同級生である花巻貴大に声をかけた。及川よりも若干背の高い彼は自分たちの世代では間違いなくレギュラー入りするだろうというポテンシャルを秘めた良い選手でもある。 そういえば彼に限らず、初対面の時はみんなに「おー、ベストセッター賞!」「有名人有名人!」だのと言われたものだ。決して慢心しているつもりはなく、彼らが自分を知ってくれていても、自分はそこまで他校の選手を覚えていないし、ちらほら見覚えがある顔がいても「もしかして試合したことあったかも?」程度でまさに「初対面」だった。 それでも入学から数ヶ月が経ち、夏休みにも入ったいまはそこそこ打ち解けたし、将来はレギュラー入りするだろうなというメンバーとは積極的に打ち解け、歩調も合わせられるようになった方だと思う。彼、花巻もそうだ。 及川は自分のコミュニケーション能力と、それに伴う観察眼にある程度の自信を持っていた。それはセッターとして必要な能力だからだ。けれども、必要以上に他人と親しくしているかと問われれば、即座に肯定はできない。 どんな自分だって自分自身であると思っているが、自分はたぶん、「素の自分」とやらをそう簡単に他人に見せるのは得意ではない。そもそも、素の自分ってどういう人間なのか。――と考えすぎそうになったところで及川は首を振るった。 そんな小難しい事を悩まずとも、自分は上手くやれている。先輩達にだって溶け込めているし、自分の代のチームメイトには他でもない岩泉がいる。来年入ってくる後輩とだって上手くやれるだろうし、岩泉を度外視しても将来レギュラーになりそうな部員と良い関係が築けそうなのは単純に良いことだ。仮に表面的な関係でも、チームとしてやっていくには十分だろう。 「あっつい、さすがに東北といえどあっつい」 「疲れたなー……」 「部室くっせ! 窓開けて窓!」 夏休み期間は練習に次ぐ練習で、その日は部活後に数人の一年で居残り練習を行ってから片づけを済ませ、揃ってあがって部室にてぐだぐだ言いながら着がえていた。 すると、誰かが「そうそう」と及川と岩泉の方を向いた。 「北川第一ってさ、2年にいいセッターがいるって話じゃない。やっぱ及川の秘蔵っ子的な感じ?」 その一言に、ピキ、と及川のコメカミがしなった。 「え、松つんなに言ってんの? なんの話?」 「いや中学んときの後輩が言ってたんだよね、なんでも北一と今年の中総体で当たったとかで、セッターに凄いのがいたって」 松つん、と及川が呼んだのはミドルブロッカーの松川一静だ。彼も花巻と同様、将来はレギュラー確実だろいうという選手でもある。 ――飛雄のことか。と、内心及川は動揺した自分を隠すように「どうだったっけなー」ととぼけ笑いを浮かべる。すると花巻がネクタイを締めながら「でもさ」と笑った。 「及川の後輩なら、高校はウチに入ってくるデショ。青城セッターこの先も安泰でめでたいじゃん?」 「ん? ちょっとマッキー、なに言ってんの?」 「おい、及川――」 「飛雄がウチに来るとは思えないね。そりゃ――」 『及川さんいるなら、俺も……』と真っ直ぐ言われたことが瞬時に頭に過ぎって、グ、と及川は言葉に詰まる。 へえ、と花巻が表情を変えないまま淡々と言った。 「飛雄ってんだ。名前呼びかよ仲良しじゃん」 指摘されて言葉に詰まっていると、松川が目線を岩泉の方へと向けた。 「岩泉、その飛雄クンって実際どうだったの?」 「あ? あー……いや、俺ら3年だったから数ヶ月しか関わってねえしな。けどま、センスは抜けてんじゃねえかな」 「まあ北一でスタメン張るようなヤツだったらウチから確実に推薦行くだろうしな。いいじゃん及川、ポジションの同じ直属の後輩だろ? 可愛がってやんなよ」 ――ヤだよ。とつい言い返しそうになるのを及川はグッと絶えた。きっと二人からは「大人げない」だの引かれるのが目に見えている。現段階の親密度では、いつも自分が岩泉に向けているような言動を二人は許容してはくれないだろう。 それに、花巻と松川は及川の目から見ても及川よりも精神的に成熟しているように見えた。自分だって、影山や牛島さえ絡まなければ――と過ぎる心情をどうにか奥に押しやって、「それよりさ」と及川もネクタイを手にとって締めながらみんなの方を見やった。 「2人とも夏の課題終わった?」 「いや」 「終わってねーけど」 「だよね。あ、岩ちゃんは聞くまでもなく終わってないよね」 「殴りたいのに図星で殴れねぇ……!」 岩泉が拳を震わせ、花巻と松川が吹き出して及川は「じゃあさ」と切り出した。 「今度のオフの日、どっかで集まって片づけちゃおうよ。4人でやれば多少ははやく終わるだろうしさ。予定、空いてるよね?」 「腹立つわー……、こっちだってデートの約束のひとつくらい――」 「ねーな」 「だな」 そうして満場一致で次の休みの予定が埋まり、四人揃って部室を出てバス停に向かう。そうしてバスに揺られて仙台駅へ向かっている最中で花巻がこんな提案をしてきた。 「せっかく4人揃ってんだし、久々にビリヤードやらね?」 ほぼその一言で寄り道が決定し、仙台駅についてゾロゾロと4人揃って移動する。 花巻は多趣味なようで、ビリヤードに始まりダンスゲームなど及川がいままで触れたことのなかった風を吹き込んでくれた張本人でもある。及川自身は物心がついた時から中学時代までバレーに次ぐバレーで全てが埋め尽くされており、趣味はイコールバレーでもあった。 いまでもそれは変わらないが、高校に入って必然的に行動範囲も広がったし、週に一度の強制オフに加えて将来のレギュラー陣とは仲良くしておこうという切っ掛けもあり、いまでは共に楽しめる程度には出来るようになった。 とはいえ。やはり花巻発信の趣味は花巻に一日の長があるのだが。と、ビリヤード場について及川・松川、岩泉・花巻というチームに別れてゲームを開始すれば、やはり花巻チームの優勢でゲームは進んだ。 「あ、あれ青城の制服じゃない?」 「うわぁ、背、たかーい……!」 及川・花巻・松川が揃っていると背の高さからかなり目立ってしまうことは及川自身も自覚していた。つまり、いつも以上に目立ってしまうということだ。及川は敏感に自分へと視線と噂話を向けている女の子の存在を感じ取って、そちらに目線を送ると、得意の笑みを向けて手を振った。 すれば小さく悲鳴が上がり、3つ舌打ちが重なったのが聞こえた。 「イケメンまじ腹立つわー」 「爆発しねーかな」 「いけ、花巻! 一気に全部落としてやれ!」 岩泉がそう叫び、花巻はニッ、と笑って台の縁に腰掛けると後ろ手でキューを持って構え、難しい位置にあるボールを連続で弾いて上手く6−7番をポケットに沈めた。とたん、遠巻きに小さく歓声があがった。 「あの人うまーい……!」 「カッコイイ……!」 それを聞いた松川がケラケラ笑って花巻とハイタッチし、及川はムスッとギャラリーに背を向けて頬を膨らませた。 「ちょっと松つん、マッキーは敵だよね?」 「いや俺らの敵イケメンだから」 「いまは勝負に集中しよう! ていうかさ、岩ちゃんが殺気放ってるせいで女の子達怖がってるよ?」 「お前が黙れば殺気なんざ立てねえよ、負け川さんよ」 「まだ負けてないし、ていうか略さないで!」 そんなやりとりをしつつゲームを続け、そのゲームは花巻・岩泉が取り、結局数ゲームをこなしてやはり花巻チームの勝ち越しで終わって4人はビリヤード場を出た。 すっかり夕暮れだ。いったん帰ってロードワークに出ようかな、などと考えつつ及川は駅で松川・花巻と別れ岩泉と共に地下鉄に乗った。 2人になったせいか、ふと部室での松川の言葉が脳裏に蘇ってきて及川は小さく呟いた。 「飛雄、上手くなってんのかな」 「あ? ああ、松川がそんなこと言ってたな。ま、アイツに限らず伸びてくる時期だろ」 「ま、そうなんだろうけどさ」 考えるな、とでも言いたげな岩泉の突き放すような声に、及川は座席の背にグッと体重を掛けて、ふ、と息を吐いた。――影山は天性の才能に加えて努力を惜しまない。情熱もある。他者より圧倒的にだ。そんな彼がどう育っているか、考えるだけでも焦燥感や緊張といったぐちゃぐちゃな感情が胸に飛来する。と、顔が歪みそうになったところでハッとした。そういえば、と別の事を思い出したのだ。 「美術部って、夏休みに部活やってないのかな……」 夏休みに入って数度、及川は美術室を訪ねていった事があった。が、いつもは美術部にいるがおらず、あれほど練習熱心な彼女でも夏は休むのかと意外に思ったのだ。 岩泉がこちらを見て二度ほど瞬きをすると、ああ、と肩を落とした。 「の事なら……、あいついまこっちにいねえぞ」 「え……!?」 一言もの名前は出していないのに何故分かったんだ、という突っ込みはあえてやめておいた。この辺りはさすがに幼なじみといった具合だろう。 「なんでも夏の間、親戚んちに行くとかって休み前に言ってたからな」 「そう。ていうかなんで知ってんの……」 「雑談ついでだ。クラスメイトだぞ」 岩泉が眉間に皺を寄せ、ふーん、と及川は目を伏せた。別に仙台にいようがいまいが、学校で会えない以上は連絡を取る手段もないし。夏の間こっちにいないって知っても何の意味もないけどさ、と及川は少し眉を寄せた。 別に関係ないけどね、と思いこもうとする意識とは裏腹に、話したかったのにさ、と相反する思いも浮かんで。ああ我ながら厄介。と自分に苛立っていると車内に降車駅のアナウンスが響いてハッとした。 取りあえずはやく帰ってロードワークに行こう。と急く背中に「走りすぎんじゃねえぞ」などという声が投げかけられて「岩ちゃん怖い……、エスパーなの?」と呟いてしまって盛大に回し蹴りをくらって意識が完全に飛んだ。 |