2月2週目の土曜は午後――。

 今日は久々に湘北にて他校を招いての練習試合があった。
 そして流川の彼女に会ってしまった……と帰り支度を整えた彩子は校庭を歩いていた。
 あの流川が好きになった子、ということで一定の興味はあったが。なるほど、目の前で披露されたジャンプシュートを見るに三井や宮城が口を揃えて「うまい」と称するバスケットスキルを持っているのは間違いないのだろう。
 彼女のバスケだけが目当てとは思わないが、いかにも流川なブレなさにいっそ感心したのも事実である。しかし。
「海南の牧の妹ってことは……あの子どうすんのかしら、将来」
 気が早い話であるが、あの牧紳一と流川が義理の兄弟になることもありえるのか。などとうっかり想像してしまってやや頬を引きつらせていると「彩子さん!」と聞きなれた明るい声が自身を呼び止めて彩子は慌てて口を噤んだ。
 この声は――。
「晴子ちゃん」
 先の主将の妹でもう一人の現マネージャーである赤木晴子の声だ。と振り返ると案の定で、彼女の隣にはいつも彼女と一緒にいる一年生の藤井と松井がいた。
 晴子は笑いながらこちらに駆け寄ってくる。
「良かった。もう帰っちゃったのかと思って探しちゃった」
「え……」
「これからうちで明日のためのお菓子を作る予定なの。彩子さんも誘おうと思って」
「お菓子?」
 言い分に彩子がいまいち解せずに首を捻ると、彼女を追って歩いてきた松井がこちらに歩み寄ってくる。
「明日バレンタインだからマネージャー二人でバスケ部全員に渡せば自然と流川君にも渡せるって魂胆なんですよ、この子」
「ち、違うわよう! わ、私はもうマネージャーなんだし流川君だけトクベツなんてそんな……!」
 慌てふためきながらも完全否定はしない晴子の様子を見つつ、「ああ」と彩子は納得した。
 もうそんな季節か、と思う。
 そりゃ湘北の大半の女子にとっては大事な日なのだろう。――当のアイツは今日は彼女とデートだろうけど。と流川の自主練が終わるまで待っていたのことを思い浮かべるとさすがに目の前の少女が不憫になり「そうね」と頷く。
「まあ明日は日曜だしね。休憩中の差し入れってことにしちゃえばいいわね」
 すればパッと晴子が明るい顔をして彩子は頬を緩めた。彼女は自身の出身の富ケ丘中とは近い距離にある中学の出身で、バスケ部所属だったこともあり中学時代から見知っている。そのころから流川に夢中で、ミーハーなところもあるけど相変わらず可愛い子。と思いつつ3人と肩を並べて駅へと向かう。
 江ノ電に乗って晴子宅の最寄り駅で降りれば、半年ほど前に赤点軍団の追試対策で来て以来の晴子の家が見えてきた。
「赤木先輩は?」
「お兄ちゃん、ずっと塾に行ってるの。だから今日もいないわ」
「そっか……。二次試験前だものね。気が重いわねー来年のこと考えると」
 自身の来年のことを考えつつ苦笑いをしながら促されるままに家へと足を踏み入れる。
 どうやらチョコレートそのものではなくチョコチップをふんだんに入れたクッキーを作る予定だったらしく、意外にも得意だという松井がてきぱきと指示を出して4人で他愛もない話をしながらお菓子作りを進めた。
 そうして焼き上がりを待っている最中に彩子は洗面所に立ち、手を洗って菓子作りのために結い上げていた髪を下ろしているとふいに鏡に松井の姿が映ってパッと振り返った。
「あ、スミマセン。驚かせちゃって。ちょっと聞きたいことがあって」
 どうやら彼女は自分を追ってきたらしく、常通りの淡々とした口調で言われて彩子は目を瞬かせた。わざわざ追ってきたということは晴子には聞かれたくないことなのだろうか。
「なにかしら」
「流川君のことなんですけど」
「え……!?」
「流川君てお姉さんとかいたりします?」
 いきなりな話に彩子は首を捻った。流川は確かに中学時代からの後輩だが家族構成までは知らず、さあ、と首を捻るしかない。が、なぜそんなこと? と問えば彼女は一度息を吐いた。
「少し前……、偶然見たんです。流川君が女の人と一緒にいるの。すごく親しそうだったし、背も高かったからもしかしたら家族かもと思って。ほら、今日の練習試合で三井さんの隣にいた海南の制服着てた人」
 ゲッ、とそこまで言われて彩子は頬を引きつらせた。
 そりゃそうだ。自分にデート場所を相談してきたくらいなのだし付き合っているのだから当然一緒にいることも多いのだろう。となれば誰かに見られている可能性だってあるわけで。と頭を抱えてしまう。
「あ……やっぱり知ってました?」
 彩子の反応から松井は何かを悟ったらしく彩子は誤魔化すように腕を組んだ。
「晴子ちゃんには……」
「言ってないですよ。私も確証持てなかったし」
「そう。……アタシも迷ってたのよね。晴子ちゃんにそれとなく伝えるべきかどうか」
「まあ……あの子ボーっとしてるから気づかないと思うけど」
「そうなのよね」
「でも正直……びっくりしたんです。流川君、見たこともないくらい楽しそうだったから」
 表情は相変わらず乏しかったけど。と続ける松井に彩子は肩を竦めた。
 楽しそうな流川というのは想像に難しいが。それでも、だから興味があった、と真っすぐ言い放った流川は真剣そのもので……。そんな彼を邪魔したくはないというのもまた本音だ。晴子をはじめ友人の中にも流川に熱を上げている女生徒を見知っているが。流川は唯一の直属の後輩で、他の部員よりも付き合いが長い。大事な後輩だし。
 などと考えているとオーブンのタイマーが切れる音が響き、ハッとして二人してダイニングに戻った。
 出来立てのクッキーを皆で味見してみたがなかなかの出来で、バスケ部への分は明日に晴子が持参するということで今日はそのまま解散となり彩子は帰路についた。

 そうして翌日――。
 バレンタイン当日。いつもなら学校全体が浮かれ気味な日であるが今年は日曜なのが幸いした。おそらく何割かの女子は明日にチョコを持参するのだろうが、それでも例年よりは騒がしさも減るはずだ。
 が。バスケ部に至っては……あからさますぎていっそ笑える。と朝から明らかにソワソワしてチラチラこちらを見やっている宮城を見つつ彩子は肩を竦めた。それに。幾人かの一年生もソワソワしている。その視線の先は明らかに晴子だ。――優しく可愛い彼女は桜木のみならず一年生の隠れたマドンナでもある。当の本人の目当ての男は相変わらずだが。と我関せずな流川を見やって苦笑いを漏らした。なんだか今日は三井まで様子がおかしい。あの人もあれでバレンタイン期待しているのかしらね。なんて呑気に思いつつ昼の休憩時。
 各自それぞれ昼食を終えてぼちぼち体育館に戻ってきてくつろいでいる時間帯を狙い、彩子は晴子と共に昨日作ったクッキーを差し出した。
 部員が少ないゆえに一人あたり均等にラッピングし簡単なリボンも添えてあり、ワッと一同から歓声があがる。
「オ、オレのために……ありがとうアヤちゃん! 大事に食べるね!」
「ありがとうございますハルコさん!! か、感激です!」
 桜木に至っては感涙の涙を流しており、何となく二年生には彩子が、一年生には晴子が配った。これなら晴子も流川に渡しやすいだろうという暗黙の了解でこうなったわけであるが。と思いつつも彩子はちらりと晴子を見やる。
「る、流川君……あの、これ」
 皆からはやや離れた壁際で休息をとっていた流川に晴子がおずおずと近づいていった。彩子が若干ハラハラしていると次いで空を切るような晴子の声があがった。
「る、流川君……どうしたの、その傷!?」
 傷、という言葉に驚いてパッと反射的に彩子も流川の方へ駆け寄る。今日の練習で怪我などしていた覚えはないが――。
「軟弱ギツネのことなど心配には及びませんよハルコさん」
 同じく反応したらしき桜木が必死に晴子の視線を流川から外そうと努めている。当の晴子は心配そうながらも「あ」と思いついたように流川を見上げていた。
「流川君……もしかしておうちで猫とか飼ってる……?」
 流川は若干うんざりしたような表情を浮かべており、彩子はその様子を見ながら絶句していた。
 晴子は猫の仕業と解釈したらしいが――、「傷」と晴子が称したそれは流川の両腕に幾重にも残った引っかき傷。爪の後。
 あれって……と視線を泳がせると三井がいたたまれなさそうに頭を抱えており「あ、やっぱり」と悟った。
「三井先輩、あれって……」
「お前マネージャー権限でジャージ羽織るように言っとけよ。見てらんねぇ」
 こそこそと小声で話しつつ彩子は三井が今日一日落ち着かない様子だった理由を悟り。ははは、と乾いた笑いを漏らした。そりゃそうか。彼女への気持ちがいくら純粋だからってそうよねえ、むしろ本能に忠実なあの子らしい……と妙に納得している先で晴子の天然は留まるところを知らない。
「わ、私、救急箱取ってくるわ……手当しなきゃ」
「……いーよ……べつに」
「だ、ダメようほっといちゃ。ばい菌とか入っちゃったら大変だわ」
 その言葉に流川が僅かに眉を寄せたのを見て「ゲッ」と彩子は慌てて割って入った。このままだと桜木も巻き込んで面倒なことになりかねない。
「ハイハイ。そろそろ練習再開! 流川、このクッキーはアタシたちからのありがたい差し入れなんだからちゃんと受けとんなさい!」
 強引に話題を本来の目的に戻し、ハッとしたらしき晴子が流川にクッキーを差し出す。腕を組んで睨みつけている自分をさすがに無視できなかったのか流川は受け取り、やれやれ、と一仕事済んだ思いで彩子はため息を吐いた。

 しかし――。
 問題は明日である。
 ここ一年は平和だったが、思い起こせばあれは……と彩子は自身の中学時代を懐かしく浮かべた。
 流川は中学一年の入学時からいまと同じようにルーキーでレギュラーを勝ち取った鳴り物入り。もともと強豪だったとはいえ富ケ丘は一気に県の決勝レベルまで勝ち上がれるほどに実績を伸ばした。それも相まってバレンタインの時は自校はおろか他校のファンまで待ち伏せする騒ぎになったのはいまだに記憶に鮮明に残っている。特に自分が三年の時はひどい有り様だった……と、あまりに声をかけられすぎたせいかノイズキャンセラー機能でも搭載したかのようにナチュラルに女生徒をスルーする流川に何とかチョコを渡そうと「渡してくれ」と大量にチョコを預けられた思い出も蘇り頬を引きつらせた。
 今日はそんなことないといいけど。と思いつつバレンタイン翌日。月曜日。
「おっす流川! 機嫌よさそうじゃん、どうしたのよ」
「はよっす」
 偶然にも下駄箱付近で顔を合わせた当の後輩はいつもの仏頂面ながら精気が宿っているのが見て取れ、背を軽く叩いて声をかけたあとに彩子はハッとした。――あー、昨日は日曜でバレンタインだったわけで。そりゃー彼女と会ったに決まってるわよね。機嫌も良いわけだ。と理由を予測できてしまい自嘲する。
 その間にも流川は自身の下駄箱を開けた。瞬間、バサバサっと所狭しと入れてあったらしきチョコレートの個包装が大量に溢れて落ち、チッ、と流川が舌を打ったのが伝った。
 ――流川は鈍いを通り越して無神経。というよりこの手のことを喜ぶタイプではない。と知っている彩子としては流川が「煩わしい」オーラを出していることを悟ったが、それでもこんな流川にチョコを渡したい女の子は大量にいるわけで。
 それを無下にするのもかわいそうなのよね。などと思いつつ昼休みを迎える頃には予想通り彩子のところにも同級生の顔見知りから「流川君に渡しておいて」とかなりの数を渡される事態となっていた。
 辟易しつつ「本人に直接渡せば」とアドバイスしたが、それが難しいことを知っている身としては最終的には押し切られるように預かった。
 流川が何を考えているかは分からないが、とことん愛想のない彼は時おり辛辣な態度を女の子にも見せる。ゆえにタイミング悪く声をかければシカトされるなどまだいい方で、冷たい言葉を返される可能性もゼロではない。
 別に優しくしろとは言わないから受け取るくらい受け取ってあげればいいのに、全くあの子は。と、昼休みに廊下を歩いていると勇気を出して流川に声をかけるも声が小さすぎたせいか小柄なためか気づいてもらえず涙目で友達に慰められている女の子を見てしまい、ハァ、とため息を吐いた彩子は流川に声をかけた。
 そうして屋上へと続く階段へ引っ張っていき屋上の入り口で流川に向き合う。
「なんすか」
「アンタねー……ちょっとは周りに気を配んなさいよ。せっかくチョコくれてんのに」
 憮然としていた流川がますます仏頂面して眉を寄せる。
「頼んでもねーのに大量にモノもってこられてもメーワク」
「アンタはそうかもしれないけどアンタみたいな不愛想な男に勇気出して声かける子の身にもなってみなさいよ」
 それに迷惑がかかっているのは流川だけではないし……と腕を組む。
「アンタもちゃんに出会っていっちょ前に恋しちゃったワケでしょ? だったらアンタに憧れてる子の気持ちも少しは分かるんじゃないの?」
「――!」
 すれば予想だにしなかったとでも言うように流川は若干目を見開いた。――自分で言いつつ、恋、という単語がこれほど似合わない男もそうはいないだろうと思う。
「彼女に冷たくされたらかなしい気持ち、今なら分かるでしょ」
「……」
 すると流川は神妙な顔つきをした。――そういえば彼女へは流川からアプローチしたって話だったか。宮城も三井もは流川を全く眼中に入れてなかったと語っていたし、もしかしたら本当に冷たくされて傷ついたこともあったのかもしれない。
 余計な事言っちゃったかも。と思いつつ彩子は明るく話を切り替えその場を後にした。

 残された流川はというと……。
 に恋をして……という言葉が引っかかってガシガシと頭に手をやっていた。
 正直、昨日は一日中ずっとの身体の具合が気にかかっていた。今日の朝に会った彼女は元気そうで、改めて気持ちを確かめ合ったことと、なによりのバスケが予想以上に好調で練習もいつも以上に気合が入り、朝からずっとバスケとのことで頭がいっぱいだった。たぶん意図的に他人をシカトしたというより真面目に耳に入っていなかったのだ。
 というかシカトしたか……? はて……などと考えつつ教室へと戻る。
「あ、流川……!」
 入り口付近の自身の席に腰を下ろすと、クラスメイトでチームメイトの石井が大きな紙袋を携えてこちらにやってきた。
「これ、流川に渡してくれって頼まれちゃってさ」
 そうしてぎっしりとチョコレートらしきものが詰まった紙袋を渡され一瞬眉を寄せた流川だったが、先ほどの彩子の言葉が過って取り合えず受け取ると机の横の取っ手に引っ掛けた。そうして思う。

『アンタもちゃんに出会っていっちょ前に恋しちゃったワケでしょ?』

 恋……というものがなんなのか、具体的には分からない。
 でも、たぶん、「好き」だと自分の感情を定義づけられたのはに触れたいと強く思ったから。その解釈が恋で合っているのかは分からないが、でも。

『る、流川くんのこと……好きだな、って改めて思ったの。そしたらちょっと離れがたくて』

 水族館でデートした日。いつもよりくっ付いてくるが意外で訊いてみたら彼女ははにかんでそう言った。だからたぶん、「触れたい」と感じることが好きという解釈で合っている……と思う。そしてたぶん、相手に触れてほしいと思うことも――と考えて流川はハッとした。
 サイドにかけていた紙袋を見やる。チョコを渡される意図はさっぱり分からない、が。

『だったらアンタに憧れてる子の気持ちも少しは分かるんじゃないの?』

 もし、この数の分だけ自分が好かれているとしたら。
 じゃあいつも試合や練習を見に来て騒ぎ立てている連中はオレに触りてーと思っ……とそこまで考えて流川は明確に脳が理解を拒否したのを悟り、そもまま机に突っ伏した。

 ――放課後。
 午後の授業は寝て過ごしてしまった。いかんいかん。と自省しながら部活へと向かう。
 に試験前に勉強を教わるようになって以降、なるべく授業はちゃんと聞くようにしているが今までのクセか寝過ごしてしまうこともままある。
 部室に入ると桜木がこちらの持っていた紙袋を見やってなにやら因縁を付けてきたためうんざりしつつさっさと着替えて部室を出る。
 体育館の入り口にはいつも通り複数の女生徒が立っていた。さすがに顔は覚えた。いつも試合では自分にエールを送っている連中だ。――その応援になにかを感じているかと問われれば、なにも感じていないが。だが、バスケのプレイで観衆を熱狂させられるのはスター選手の証明でもある。マイケル・ジョーダンがそうであるようにだ。だからプレイを注目されているとしたら悪い気はしないというのもまた本音でもある。
 対戦相手が自分より声援を受けていたらそれはそれでイラつくし。と脳裏にいけ好かないツンツン頭が浮かんで無意識に盛大な舌打ちをしてしまった。
「いい? いくわよいくわよ!」
「うん。せーのッ」
「流川君!」
 そんなことを考えていると示し合わせたように入り口をふさいでいたうちの3人に声をかけられ、流川は足を止めた。すれば、止めたことが意外だったのか3人そろって「キャー!」と奇声をあげ思わず顔をしかめてしまう。
「なに……」
 応えれば再び奇声をあげられ、なんだ……と今度は無言で見やった。
 3人はお互いに顔を見合わせ、そして3人そろってズイっと一つの大きな包みを差し出してきた。
「あの、これ」
「私たち親衛隊一同から流川君に!」
「これからも一生流川君を応援し続けるのでガンバッテ!!」
 シン、と周りが静まり返る。どうやら既に体育館に来ていた部員もこちらを注視しているようだ。
 流川の脳裏に昼間に彩子に言われたことやさきほど寝落ちする直前に考えてしまったこと。今朝のとのやりとりなど一瞬色んな思いが駆け巡った。が。それでも。オーエンなら、と一度3人に向き直った。
「……どうも」
 そうして包みを受け取ると、一瞬惚けた3人の表情が映る。かと思えば次の瞬間には思わず耳をふさぎたくなるほどの奇声が辺りを包んだ。
「ど、どうしようどうしよう……! 受け取ってもらえたわ!」
「流川君サイッコー!!!」
「一生あなたについていくわ……!!!」
 取りあえず用事は済んだらしいのでその場をあとにしたが、そんな声が背後から響いて流川はそれ以上はいつも通り耳に入れないことにした。

 そうしながらも思う。
 チョコを渡すことになんの意味があるんだろうか。と。
 なぜか年に一回、主に女子から大量にチョコレートを渡されるうえに好きだの応援してるだのを言われる日があるが。
 いったい何なんだろう。――明日、にきいてみるか、と思う。
 明日、彼女は来るだろうか。付き合う前は週に2,3回しか顔を出さなかった彼女であるが付き合って以降は平日はほぼ毎日一緒に練習をしている。
 ただもちろん確実ではなく。彼女の来ない日はやはり物足りない。今朝に会ったばかりだというのにもう明日が待ち遠しいと思っている自分がいる。
 話したいことが一つ増えた、と思いつつ包みをコートサイドに置き、流川はコートへと向かった。


TOP
きっと明日の朝はバレンタインについて不毛なやり取りがあったはず。
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